伝統芸能の楽しみ方 2019.10.01お出かけ, 伝統芸能, 連載 能楽堂へ行こう vol.54 能「卒都婆小町」 「かへらじと かねて思へば 梓弓(あずさゆみ) なき数に入る 名をぞとどむる」この句は、南北朝時代の南朝の都であった、奈良県吉野の如意輪寺の本堂「如意輪堂」の扉に鏃(やじり)で彫られた楠木正行(まさつら)の辞世の句です。今、寺宝になっています。正行は「太平記」で著名な楠木正成の嫡男としてこの世に生を受け、神戸の湊川で生涯を閉じた父と同じように、勝ち目のない戦(いくさ)に出陣し四條畷で最後を遂げます。その時、合戦に赴く際に読んだ辞世の句とされています。この正行が能の大成者である観阿弥の従兄弟だと云う説があります。上嶋家古文書によりますと、観阿弥の母親が楠木正成の姉妹だと記載されています。観阿弥の孫で世阿弥をしのぐ能役者、謡曲の天才と謳われ、南朝方に近いとされた元雅の死は、北朝方の謀殺であるとしてスーパー能「世阿弥」を書き上げた梅原猛氏は、観阿弥と正成の関係を自著で主張しています。ただ、この説は学者の間でも、信憑性を巡って分かれているそうです。余談ですが、楠木正成を御祭神としている湊川神社には、そのような縁で「神能殿」と云う能楽堂があります。正行が残した句には、いみじくも舞台人の心得が読まれているような気がします。弓の弦を離れた矢は二度と同じ所には戻らない。能楽師が舞台に出ればそこは一期一会の世界、やり直しの効かない世界、そう云う世界を肌で感じてみませんか? 【 京都観世会 2019年10月1日〜11月14日の催し 】 ● 第61回京都観世能10月27日(日)11:00〜[主な演目] 能 「安宅 勧進帳 瀧流」:河村和重 能 「卒都婆小町 一度之次第」:梅若実 狂 言「墨塗」:茂山七五三 能 「融 十三段之舞」:杉浦豊彦 [ 入場料 ]S 席(1階正面指定席) 12,000円A 席(1階脇正面中正面指定席) 10,000円 B 席(一般2階自由席) 6,000円学生券(2階自由席) 3,500円 ● 伝承の会11月9日(土)13:00〜[主な演目] 能 「嵐山 白頭」:井上裕久狂 言「腰祈」:茂山慶和 能 「土蜘蛛」:大江信之助[ 入場料 ]一 般 3,000円学 生 1,500円 京都観世会館 京都市左京区岡崎円勝寺町44お問い合わせ|tel.075-771-6114(月曜休館日、月曜が祝日または振替休日の場合は火曜日が休館日となることがあります)http://www.kyoto-kanze.jp/⬛️ 地下鉄東西線「東山駅」下車 1番出口から徒歩約5分⬛️ 京都市バス[5][100]で「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車徒歩約3分⬛️ 京都市バス[31][46][201][203]で「東山仁王門」下車徒歩約5分 伝統芸能の記事一覧に戻る Tweet Share お出かけ, 伝統芸能, 連載