『御菓子司 松屋』代表・中川憲一さん

『御菓子司 松屋』
代表取締役・御菓子職人
中川 憲一さん

なかがわ けんいち。京都府城陽市出身。明治時代から続く老舗和菓子店『御菓子司 松屋』の代表。伝統的な技術を駆使した和菓子づくりに取り組む一方、2017年には新ブランド『旅籠屋 利兵衛』を立ち上げ。「御菓子の持つ新たな可能性の追求」という理念のもと、和菓子と洋菓子の概念を新たな視点でとらえた新感覚の御菓子を生み出している。
未来の御菓子屋の姿を模索し”進化する”老舗を目指す
新ブランド『旅籠屋 利兵衛』について教えてください
明治時代から続く和菓子店『御菓子司 松屋』の新ブランドとして2017年に立ち上げた『旅籠屋 利兵衛』では、「御菓子の持つ新たな可能性の追求」という理念のもと、伝統的な和菓子の製法に洋菓子の技術・感性を組み合わせた”新感覚”の御菓子づくりを行っています。このブランドは未来の御菓子屋の姿を模索する中で生まれました。少子高齢化による人口減少が進む中、将来的に職人という業種にも変革を求められることは明白で、私たちは”来るべき未来”に適応する準備をしなければなりません。しかし、従来の『松屋』という看板で急激な変革をもたらすことはかえって逆効果でないかと考え、看板を傷つけず大胆な変革を行うために『旅籠屋 利兵衛』を立ち上げました。
“旅籠屋”という屋号は300年以上の歴史を持つ『松屋』のルーツに由来します。店を構える城陽市は、江戸時代、京都と奈良を結ぶ宿場町として栄え『松屋』も当時は旅籠を営んでいました。そこで新ブランドの立ち上げにあたって、自分たちのルーツを見つめ直し、先人への感謝の気持ちを込めたいという思いから屋号に取り入れました。“利兵衛”は城陽市の名産品であるサツマイモの栽培方法をこの地に広めた地元の偉人・嶋 利兵衛さんにあやかった名づけです。利兵衛さんは松屋のご先祖と深い親交があったそうで、利兵衛さんのように地元に必要とされ、役に立てるお店づくりを日々心がけています。

御菓子づくりにかける想いを聞かせてください!
洋菓子の技法を研究してつくった看板商品の『たわわ極みどら焼き』をはじめ、店頭に並ぶ御菓子の多くが『旅籠屋 利兵衛』でしか味わえないものと自負しています。こういった“新感覚”の御菓子を提案しているのは、ひとえに時代の変化に対応していくためです。『松屋』が創業して300年以上経ちますが、その間に私たちの食文化やライフスタイルは大きく変化してきました。昔ながらの味を継承し残していくことも大切ですが、今のニーズに合わせて進化していくことも同じくらい重要です。だからこそ『旅籠屋 利兵衛』では和菓子、洋菓子を新感覚の視点でとらえ、日々新しい御菓子の形を追求しています。
御菓子というのはあくまで間食に過ぎませんが、古来より日本の文化や精神性に深く寄り添ってきた存在でもあります。だからこそ、御菓子というのは誰かのことを想い、その気持ちを形にしたものであると私は考えます。私たち御菓子職人は想いの代弁者として、優しい気持ちを優しい味で表現しなければいけません。それが御菓子づくりで大切なことだと思っています。

御菓子以外に芋焼酎も販売されているとお聞きしました
当店オリジナルの芋焼酎『利兵衛』のことですね。屋号の由来となった嶋 利兵衛さんと縁深く、城陽市の特産品でもあるサツマイモにちなんだ御菓子をつくろうという話になった際、材料となるサツマイモの栽培から自社で行うことにしたんです。するとサツマイモ(利兵衛芋といいます)があまりにたくさんできたので、御菓子以外での活用方法を考えることになりました。そこで城陽市には焼酎の特産品がないことに気づき、チャレンジすることにしました。
芋焼酎が苦手な女性でも飲みやすいように芋臭さを抑え、フルーティーな味わいとすっきりとしたのど越しに仕上げた自慢の商品です。御菓子とともにぜひ一度ご賞味ください。
将来の夢を教えてください!
「魅力ある店づくり、ものづくり、人づくり」を理念として、昔ながらの御菓子から新感覚の御菓子までOldからNewの調和を目指し、御菓子づくりの精進を怠ることなく、進化する老舗を目指していきたいと思います。
