京都シネマスタッフのおすすめ映画レビュー★ vol.3『幸せなひとりぼっち』

世界には目を凝らさないと出会えないような名作映画がたくさんあります。それはミニシアター系のアート作品だったり、劇場公開されずにパッケージ化された作品(通称:DVDスルー)、あるいはまったく無名の若手監督のデビュー作品だったり…。それらの中から「この作品に出会えてよかった!」とあなたに思ってもらえるような一本が見つかりますように。
Vol.3
『幸せなひとりぼっち』
今回はちょっとめずらしいスウエーデン映画を紹介します。みなさんはスウエーデンと聞くとなにを思い浮かべますか?IKEA、ノーベル賞、オーロラなどなど…わたしのとぼしい知識では北欧にある寒い国っていうイメージです。あ、白夜もあるんだっけ?そんなスウエーデンですが、ユーモラスでちょっぴりビターな人間ドラマの映画の宝庫でもあるんです。
紹介するのは、スウェーデンの人気小説家フレドリック・バックマンによるデビュー作を映画化した『幸せなひとりぼっち』。原作は2012年に発表後、瞬く間に30ヶ国以上で翻訳され200万部以上も出版されているベストセラーです。

©Tre Vanner Produktion AB. All rights reserved.
~Story~
愛する妻を失い、哀しみにくれるオーヴェ。1人で生きていく人生に希望が持てず墓参りの度に失意を募らせていた。 ある日、そんなオーヴェの隣にパルヴァネ一家が引っ越してくる。 浴びせられる罵声をモノともせず、何かと問題を持ち込むパルヴァネにオーヴェは次第に心を開いてゆく。 悪態はいつしか愛嬌になり、彼は愛する妻との思い出をゆっくりと語りだし…。
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主人公のオーヴェはちょっと変わり者…というか、まあぶっちゃけ偏屈な頑固じじい。町内の風紀委員みたいな感じで、会えば誰にでも口うるさくガミガミ説教を続け、とにかく住人のみんなにウザがられています。その細かさ、説教の長さにわたしも最初は若干引きぎみでした。
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でもオーヴェは最愛の妻を亡くしていて、その妻と暮らした町を大切に思っているということがわかってきます。口はめちゃめちゃ悪いんですけどほんのり思いやりが垣間見れて実際町の人も心から彼を嫌っているわけではなさそうです。このあたりタイトルの妙を感じるところです。
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ちなみに、主人公のオーヴェは失意の底で亡き妻のもとに旅立とうと何度も何度も自殺未遂を繰り返します。でもその度にやかましい隣人や町の人々のトラブルに巻き込まれて思いを遂げられません。「あなたってほんとうに死ぬのが下手ねえ」と笑われるのですが、そうやって渋々ながらもこの世界に留まった彼は再び素晴らしいものを手に入れるのです。それは映画の中だけじゃなくいつも人との関係こそが希望を見せてくれるんじゃないかと思っています。
En man som heter Ove/2015/スウェーデン/116分/監督:ハンネス・ホルム/出演:ロルフ・ラッスゴード、バハー・パール、フィリップ・バーグ
京都シネマで公開中のおすすめ作品
『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』
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さて京都シネマではただいま『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』を上映中。お気づきになりましたね。そう、同じ原作者フレドリック・バックマンの最新作を注目の若手女性監督が映画化した話題作です。主演は『スター・ウォーズ』エピソード1、2でアナキンの母 シミ・スカイウォーカー役で世界的にその名を知られるスウェーデンの国民的女優 ペルニラ・アウグスト。
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~Story~
ブリット=マリーはスウェーデンに住む専業主婦。結婚して40年、仕事で多忙な夫のために毎日食事を作り、 家の中を綺麗に整えておくことが自分の役割だと信じて疑わなかった。しかしある日、彼女に人生の転機が訪れる。夫が出張先で倒れたという知らせを受け病院へ駆けつけると、付き添いには夫の長年の愛人がいて…。
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人生のスタートラインにはいつだって立てる。第二の人生に踏み出そうとする、 おひとりさま女性63歳の再出発奮闘記が、わたし達に愛と勇気をもたらしてくれます。必見ですよ!
Britt-Marie var Her/ 2018/スウェーデン/97分/監督:ツヴァ・ノヴォトニー/出演:ペルニア・アウグスト、アンデシュ・モッスリング、ペーター・ハーバー
9月15日(木)まで京都シネマで公開中!