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『京料理さくらい』店主・櫻井登之さん

『京料理 さくらい』三代目・店主

櫻井 登之さん

さくらいのぼる。大正12年(1923年)に上賀茂神社の社家町に創業した料理店『京料理 さくらい』の三代目店主。高校卒業後、父である二代目店主・武清氏の勧めを受け、白馬八方尾根スキー場の民宿に居候として預けられたり、幾度となく渡米し見識を広めた。京都を離れたことで京料理の美味しさ、素晴らしさに目覚め、家業を継ぐことを決意。祇園の高級料亭で5年間修行を積んだ後、実家に戻り『京料理 さくらい』の三代目を継ぐ。信条は「(料理は)素材ありき。料理人は素材の持ち味を引き出す裏方」。一方では近年、料理屋の味が自宅で楽しめるお取り寄せギフト「京の煮焚きもん®」も展開している。

 

京料理で大切なのは、素材の持ち味を引き出す“裏方”に徹すること

 

まもなく創業から100年を迎える『京料理 さくらい』のこれまでの歩みについて教えてください。

『京料理 さくらい』は、私の祖父にあたる初代店主・櫻井伍兵衛が大正12年(1923年)に創業しました。当時は近隣のお得意様に御用聞きをして、おかずを届ける「廻り」(仕出し業)をしていたそうで、伍兵衛が晩年に隠居所として求めたのが、現在の弊店別館となります。

 

その後、私の父である櫻井武清が二代目店主となると、業態を仕出し業から料理飲食業にシフトするために、別館の設えを料理屋として整え、回遊式庭園を造園しました。庭園内の大きな観賞魚池には数多の錦鯉を泳がせております。私が実質三代目として店を任されてからは、宴会場として体裁をなした別館を、和婚(神社婚)の披露宴会場としてもご利用いただいております。

 

また近年は小規模事業者として事業を持続するために、ギフト商品「京の煮焚きもん®」(素材をいかした薄味佃煮)の販売も始め、「薄味なのに美味しい」とご好評を得ております。

 

 

『京料理 さくらい』が大切にしている“こだわり”について知りたいです!

私どもの信条は第一に「素材ありき」。料理の“美味しさ”とは、調味料の味ではなく素材の持ち味であり、私たち料理人は素材の持ち味を引き出す裏方に徹しなければならないと、日々精進しております。そのため仕入れには特にこだわっておりますが、ええ(良い)仕入れができるのは、どんな時もええもんを揃えてくださる仕入れ先様、ひいては漁業者様、生産者様のおかげと本当に感謝しております。

 

ちなみに、素材の持つ旨味を引き出す為に最も重要なことは、“ええ出汁”をひくこと。特に『さくらい』では利尻昆布の旨味を充分に抽出し、本枯れ節を自ら削ったかつおを用い、出汁をひいております。

 

写真提供/京料理 さくらい

 

ええ仕入れができて、そのうえ本節が薄く綺麗に削れて、美味しい出汁がひけた時の嬉しさや充実感はひとしおです。

 

店構えのこだわりとしては、料理屋はハレする場所でないといけないと常々考えており、非日常を感じていただけるような設え、琳派の掛け塾、清水焼の作家物などを用意し、なおかつ押しつけがましくない魅力を漂わせられるよう「less is more」であること心掛けております。語り始めると止まらなくなってしまうので、このあたりにしておきますね(笑)。

 

写真提供/京料理 さくらい

 

お店を継ぐことは子どもの頃から意識していましたか?

いえ、幼少の頃は休日にちゃんと休めて、家族との時間を有意義に過ごせる、お勤めの人になりたいと思っていました(笑)。この業界のあるあるなんですが、両親はお店を切り盛りするのに忙しく、休みの日はいつも親戚に預けられていましたので。私は長男ですが、両親から「家業を継げ」と言われたことは一度もありませんでしたね。代わりに高校を卒業する際に「視野を広めろ」と、スキー民宿に預けられたり、アメリカ・ニューヨークに在住されていた父の恩師の元に預けられたりしました。

 

アメリカでは本当に色々なことを体験しましたが本筋ではありませんので省きます(笑)。結論から言うと、京都を離れたことで逆に京料理の美味しさ・素晴らしさに目覚め、家業を継ごうと決意しました。父はそうなることを見越していたのかもしれません(笑)。機会があれば聞いてみたいですね。

 

また、正直に申しますと、私自身この家に生まれながらそれまで魚が苦手で、京料理の代表格であるハモも食べられませんでした。料理人への道に進まずサラリーマンになっていたら、今でもハモが食べられなかったのかもしれません(笑)。

 

 

料理人を志してから現在に至るまでのお話も聞きたいです!

京都に戻ったきっかけは祖母の急逝でした。ちょうど、向こうの大学で新しいセメスター(学期)が始まろうとしていた時で、泣く泣く帰郷したことを覚えています(笑)。京都に戻った後は、茶道を好む数寄者だった叔父の紹介で、そのまま祇園のとある有名店に預けていただきました。

 

面接時に「本当は京都の子はとらない」と開口一番言われたのですが、「伯父の頼みなら断れん!!」と特別に許可をいただき、地の利のある京都で、しかも「料理界の東大」と言えるような名店で修行させていただけました。

 

修業時代の私は…結構な問題児だったと思います(笑)。にも関わらず、当時の料理長や先輩方にはとても良くしてもらって。先輩にはよく木屋町に飲みに連れていただきました。先輩方とは今でもフラットにお付き合いさせていただいており、本当にありがたい限りです。

 

そのお店で5年弱お世話になった後、実家に帰り26歳の時に結婚をしたんですが、妻(現・若女将)との出会いも修行先の先輩からの紹介がきっかけでした。私の好きな「繁盛繁栄は人の繋がりから」という言葉があります。私の今までは本当に「人と人との繋がり」からのおかげさまだと強く思います。

 

「近江牛きくらげ葡萄酒焚き」に用いる、京都府亀岡市で栽培されたきくらげを刻む、櫻井氏

 

櫻井さんの考える“京料理の魅力”とは何でしょうか。

“その魅力を引き出すために、その素材の味をいかすこと”だと思います。 一つ、具体的な例を挙げるとすれば、キラキラ光る出汁とその味を高める椀種、つまり煮物椀を大切にしております。吸い物ではなくお菜として召し上がっていただく煮物椀は、会席料理の花形とも言われているので、気合の入りようもまた格別です。

 

なにぶん言葉にすることが機微なものなので、上手くニュアンスが伝わるかわかりませんが…ひとくち目から美味しいもんは、あとで必ず飽きると思います。ジャストを狙った塩加減は、ひとくち目が美味しいんです。けれど、食べ進めるうちに段々と塩からくなってしまいます。すると、しまいには帰り道に喉が渇いて、「しもた…」という結果になります。

 

私どもが目指す塩分量は、食べ進むなかで、旨味が積み重なっていくとでも申しましょうか。煮物椀を召し上がる時、ひとくち目は、出汁に舌(味蕾)を馴染ませるため、少し薄い加減に感じられるかもしれません。口内をゆすいでいただくとでも申しましょうか。次に進んでいただくための序章です。そしてふたくち目で出汁に含まれる旨味を徐々に味わっていただき、さんくち目には椀種に箸を入れていただき、季節の味を堪能していただく。すると出汁、吸い口の香りが三位一体となり、ひとくち目の薄味は、程良い旨味へ変わることでしょう。

 

ちょっと長くなりましたが、つまりはお箸を置かれた時に「ああ、美味しかった」と喜んでいただけることが、私どもにとって一番幸せなことなんです。このような組み立てを念頭に置いて、心がけることができるのが、京料理の魅力ではないでしょうか。

 

写真提供/京料理 さくらい

 

今年始めたお取り寄せギフト「京の煮焚きもん®」のこだわりや販売の経緯について教えてください。

発端は7年ほど前で、友人から「是非御中元ギフトをやって欲しい」と言われたことがきっかけでした。 前触れのない急なお話だったので、ビックリしたことを憶えています(笑)。このきっかけは、まさに「人と人との交わりから」を標榜する団体の出会いでした。

 

それまでにも「ちりめん山椒」や「子持ち鮎」を少し焚いてイートインにてお出ししていたことはありましたが、ギフト商品となるとパッケージなど体裁も整えなければなりません。材料を集め、試作・試食を重ね、袋入りの製品に貼るラベルを作って、箱に入れて、宅急便の宛名シールを貼る、すべての作業が手探りの状態で大変でしたが、何とか形となり今ではご好評をいただいております。

 

『京料理 さくらい』が創る「京の煮焚きもん®」3点セット

 

商品のこだわりは、第一にやはり素材の味を活かすこと。味の濃い加工食品があふれるなか、“薄味なのに美味しい”を目指しております。そして主材料から副材料、調味料まで、きちんと出自の明らかなものしか使っていません。

 

「ええ素材やないと、ええもんは作れない」これは絶対です。 美味しくないもんを、何とかして美味しくしようとしても、必ずほころびが生じます。仮に上手く調理できたとしても、その商品に対して自信が持てずお客様におすすめできません。それはお客様にも伝わります。当たり前のことですが、そんなものは決して売りたくないと考えております。

 

「京の煮焚きもん®さくらい」オリジナルの「近江牛ときくらげ葡萄酒焚き」。稀少な亀岡産のきくらげを使用

 

ほかにも『京料理 さくらい』で新しく始められた取り組みはありますか?

コロナ禍の時勢に合わせたリモート忘年会・新年会向けの取り組みとして、「京の煮焚きもん®」をリモート忘年会・新年会に参加される皆さまのお手元にお届けするサービスを始めました。

 

我々は今まで経験したことのない、年越し・新年を迎えます。ITが発達してリモートで画面越しに顔を見たり声を聞けるようになっても、何か共有するものがないと、なかなか心まで通わないと思います。私たちは昔から何かイベントの時には必ず「同じものを一緒に食べて飲む」=会食を伴ってきました。食べながら、飲みながら話すことで「一座建立」と言いますか、心が通じ合い、気持ちの良い雰囲気が生まれるからです。

 

しかし、忘年会・新年会・新春の家族会など、この冬は集まることができません。だからこそスクリーン越しではありますが、同じものを食べる。そうすれば会えなくても、離れていても、自ずと気持ちが伝わるのではないでしょうか。LINEでもfacetimeでもZoomでも、つなげる時にご用意ください。その時はお酒も少し多い目に、ご飯も多めに焚いてください(笑)。もちろん、帰省の代わりに送る「帰歳暮」としてご利用いただくのもおすすめです。

 

 

最後に櫻井さんの将来の夢を教えてください!

「変わらずに変えていく」。とある先輩から教えていただいた私の好きな言葉の一つです。急な変化があると、お客様に変わりすぎたと思われ、足が遠のかれると思います。しかしずっと一緒なら、これまたお客様から飽きられてしまいます。その中庸を進むことが、私の目標です。

 

手前どもの話で恐縮ですが、まもなく創業100年を迎える『さくらい』はこれまで幾多の困難を乗り越えてきました。今もまた、新型コロナウイルス感染症の拡大によって厳しい状況が続いていますが、このことを昔話として語れる明るい未来が来ることを信じております。あまり大風呂敷を広げるのは得意でないので、これくらいでご勘弁ください(笑)。 

 

 


 INFORMATION 

●京都上賀茂 京料理 さくらい

京都府京都市北区上賀茂山本町39

11:00 ~ 21:00(不定休)

※前日までのご予約、ごゆっくりお召し上がりいただくために19:00までにご入店いただきますようお願いいたします。

TEL:075-781-2570

京料理さくらい 公式サイト

京の煮焚きもん さくらい 公式サイト

 

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