京都シネマスタッフのおすすめ映画レビュー★ vol.6『ゴッズ・オウン・カントリー』

世界には目を凝らさないと出会えないような名作映画がたくさんあります。それはミニシアター系のアート作品だったり、劇場公開されずにパッケージ化された作品(通称:DVDスルー)、あるいはまったく無名の若手監督のデビュー作品だったり…。それらの中から「この作品に出会えてよかった!」とあなたに思ってもらえるような一本が見つかりますように。
Vol.6
『ゴッズ・オウン・カントリー』
ある日突然、名前も知らない新人監督が撮った映画が世界中で評価され大絶賛される。完璧なデビュー作というものがあるとすればこの作品はまさにそう呼ぶにふさわしい傑作と言えるでしょう。“神の恵みの地(ゴッズ・オウン・カントリー)” と呼ばれるイギリス・ヨークシャー地方を舞台に、愛の生まれる瞬間を荘厳な映像美で綴った美しい作品です。

©Dales Productions Limited / The British Film Institute 2017
~Story~
イギリス・ヨークシャー。ジョニーは、祖母と病気の父に代わり、牧場をひとりで管理している。孤独でやりがいを感じられない過酷な毎日を、酒と行きずりのセックスで紛らわしていたが、ある日、短期労働の為ルーマニアからゲオルゲが雇われる。初めは衝突する二人だったが、羊に優しく接するゲオルゲに、ジョニーは今まで感じたことのない恋心を抱き、突き動かされていく…。
©Dales Productions Limited / The British Film Institute 2017
監督・脚本を務めたのは、イギリスのウエスト・ヨークシャーにある農場一家で幼少期を過ごしたというフランシス・リー。本作の撮影場所からほんの10分ほどの距離に父親の農場があるといいます。
©Dales Productions Limited / The British Film Institute 2017
撮影は春のヨークシャーで6週間にわたって敢行されました。「実際にこの目で見て、感じた世界を描写したかった」というその言葉通り、スクリーンに切り取られるのは、羊の出産や皮剥といった生死に直面したヒリヒリとしたリアルな風景です。
©Dales Productions Limited / The British Film Institute 2017
曇り空の下で寂しく厳しい世界は、愛する人がいるだけで神々しいまでに光り輝き、私たちの胸を強く揺さぶるのです。
R15+/God’s Own Country/2017/英/105分/監督:フランシス・リー/出演:ジョシュ・オコナー、アレック・セカレアヌ、ジェマ・ジョーンズ、イアン・ハート
京都シネマで近日公開のおすすめ作品
『アンモナイトの目覚め』
©2020 The British Film Institute, British Broadcasting Corporation and Fossil Films Limited.
そして京都シネマでは4月9日(金)より『アンモナイトの目覚め』の上映が始まります。『ゴッズ・オウン・カントリー』で鮮烈なデビューを果たしたフランシス・リー監督が、孤独の中に埋もれた自分を発掘して行く女性たちの姿を描きます。
©2020 The British Film Institute, British Broadcasting Corporation and Fossil Films Limited.
~Story~
1840年代、イギリス南西部の海辺の町ライム・レジスで、世間とのつながりを絶ち暮らす人嫌いの古生物学者メアリー・アニング。かつて彼女の発掘した化石は大発見として一世を風靡し、大英博物館に展示されるに至ったが、女性であるメアリーの名はすぐに忘れ去られ、今は観光客の土産物用アンモナイトを探しては細々と生計をたてている。そんな彼女はある日、裕福な化石収集家の妻シャーロットを数週間預かることとなり…。
©2020 The British Film Institute, British Broadcasting Corporation and Fossil Films Limited.
何と言っても注目されたのは、ハリウッドを代表する演技派でありアカデミー賞女優のケイト・ウィンスレットと26歳にして鮮烈な表現力でアカデミー賞4度のノミネートを誇るシアーシャ・ローナンの、初共演にして体当たりの演技合戦です。イギリスの重苦しい景色の中で、感情を押し殺して生きてきた2人の女性の感情が激しく燃え上がる様を、抑圧と爆発のコントラストの演技で魅せています。
©2020 The British Film Institute, British Broadcasting Corporation and Fossil Films Limited.
閉塞感に閉ざされた世界で、一筋の光のように差し込んだ愛をテーマとしているのは、『ゴッズ・オウン・カントリー』とも通ずる部分ではないでしょうか。儚くも美しいフランシス・リー監督独特の世界観をどうぞ堪能してください。
R15+/Ammonite/2020/英/118分/監督:フランシス・リー/出演:ケイト・ウィンスレット、シアーシャ・ローナン
4月9日(金)より京都シネマで公開!
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