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2018.8.31映画

『皇帝ペンギン ただいま』

12年の歳月を経て、皇帝ペンギンが再びスクリーンに登場!

『皇帝ペンギン ただいま』

 

 

世界で2,500万人以上が観た『皇帝ペンギン』が、12年ぶりに帰ってきた!

世界でもっとも過酷な子育てをする鳥と呼ばれる彼らの姿と、南極の絶景を迫力の映像で紹介する『皇帝ペンギン ただいま』

公開を前に、日本語版の監修を担当された“ペンギン博士”上田一生氏に、映画の見どころやペンギンの魅力について語っていただきました。

 

 

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ー日本語版の監修にあたり、気をつけたことを教えてください。

 

上田一生氏(以下、上田)

3つあります。

1つめは、リュック・ジャッケ監督自身が研究者ですので、けっこう専門用語を使ってるんですね。

そのまま訳してもわかりにくいことが多いので、わかりやすい表現にすること。

2つめは、僕は監督とは同じ研究者であり、友人でもあるので、彼の意図を汲み取るということ。

3つめは、こういうネイチャードキュメントで1番危険なのは、過度の擬人化なんですね。

ありがちなのは、人間の感情表現の言葉をそのまま使ってしまう。それでは原作の意図が変わってきてしまうので、そういった表現に気をつけました。

 

ペンギンというのは直立不動で人間に姿がよく似ているので、擬人化しやすくなってしまうんですが、こういうドキュメンタリーの場合は、嬉しいとか、悲しいとか、怒っているとか、そういった表現は極力おさえなければならない。

リュック・ジャッケ監督はそこがとてもうまくて、ここは「悲しいんだろう」「驚いているんだろう」「くやしがっているんだろう」というような言葉を本当は使いたいんだけど、彼も生物学者だからそれは使えないので、それを映像で、風景や音で表現しているんですね。

 

例えば、老いたペンギンが1羽たたずんでいる姿を、背中、後ろ頭から撮ってる映像がありますね。

あれは海への思い入れを言葉で語りたいんだけど、そういうときに監督がどういう解説をつけているかというと、

「ここで彼の体の中に大きな変化がおこっている」

としかいわないんですね。

そこでは非常に科学的なことを語っていて、皇帝ペンギンは28分間、息継ぎをせずに潜水できるんですね。600メートルぐらい潜るんですよ。

人間のように頷きながら、実は呼吸を深くしてまして、体の中に酸素を取り入れてます。

ペンギンの血液は人間よりも酸素を吸着しやすく、血液がタンクになっているんですね。

また「気のう」というのがありまして、ペンギンの場合は海に潜るため、そこに空気をたくさん取り入れる。

それをただ淡々と語って、もろにその感情を言葉にしようとせずに、事実をナレーションとして入れることによって、観客から

「でもね、それ以外にこいつは絶対なにか考えてるよね」

ということをうまく引っ張り出す。

彼の狙いはそういうところなんだと思います。

 

僕はフランス語版と英語版を両方もらってるんですけど、見比べるとかなり表現が違ってて、その場合は(原語である)フランス語のほうをとってるんですけど、フランス語って単語や文章そのものが詩なんですね。

まともに訳すと、詩なんです。

あまりにも叙情的になってしまうので、聞いてると照れ臭くなるような、そういうものになっちゃうんですね。

だからそれをなんとか監督の意図に合わせて、ドキュメンタリーとしてあまり固くならずに、でもしっかりと伝えるべきところは伝えて、というのがちょっとたいへんでしたね。

 

研究者としての禁止用語なんかもありまして、(ペンギンの翼の部分を指して)たとえばこれをなんていいますか?

 

 

 

上田

じゃなくてなんです。

羽というのは羽毛のことです。

ドキュメンタリーの場合は、これを羽といってしまうとアウトなんです。

そういったトリビア的なことがいたるところにありますので、そういう楽しみ方もできますね。

 

 

ーペンギンの生態や生活する力といったものを通じて、観客にどういうことを訴えていると思われますか。

 

上田

日本語版ナレーションの草刈正雄さんは、厳しい環境下での親子の絆に触れて、収録のときに思わず涙されたとおっしゃってました。

たとえば100個卵が生まれると、そのうち無事に巣立ちまでいくのは4個ぐらいしかない。

それぐらい厳しい中で、いろんな試練にさらされる。

「この子は非常に幸運な子だ」

というナレーションが3回ぐらい出てきて、しつこいなと思われるかもしれませんけど、あれは我々も本当にそう思ってて、あれだけたくさんペンギンがいるのに最後に巣立ってたヒナたちは少なかったでしょう。あれが現実なんですよ。

だからそういう厳しさというものを読み取っていただけると思うんですけど、この生き物の特殊性というか、なぜよりにもよって南極の、この地球上でもっとも寒い冬に、そんな苦労して子育てしなきゃいけないのか、やっぱりそんなところが疑問として観る方に浮かんでくるような、そういうことを心がけ、重視していると思います。

 

先ほどもありました擬人化という点でいえば、見た目がほとんど人間なので、ペンギンは難しいですね。

南極に行きますとね、皇帝ペンギンが向こうから寄ってくるんですよ。

南極大陸で直立二足歩行しているのはペンギンしかいないわけで、人間が上陸すると、向こうから仲間だと思って寄ってきます。

で、しばらく見て、突っついたりなんかしたら、

「違うな」

と思って去っていくという。擬人化したらいけないんだけど、でもこの生き物は人間にとても興味を持っている生き物でもあって、そういう相反することを伝えていかなければいけないところが、面白いところだし難しいところでもあります。

ペンギンは他の動物と違って、どうしてもついうっかり人間の表現を使ってしまいたくなりますね。

 

 

ー人間のように見えてしまうと僕が1番感じたのは、一列になって続いて歩いているシーンで、なんだか会話をしているようにも見えて、それが学校の集団下校のように見えました。

 

上田

「集団下校」いいですねぇ。それどこかで使わせていただきます(笑)。

あれは会話をしてます。

映像では音を拾ってないんですけど、小さい声で「ウッウッ」といった声を出しながら進んでます。

いちばん多いのは「コンタクトコール」といって、お互いの存在を確認しながら、危険が迫っているときは「アーッ」と長く鳴いて、盛んにそういう声を出して知らせますね。

 

一列になって歩くのは、南極の氷というのは2種類あるんですけど、1つは雪が固まったもの、もう1つは海水が凍ったもので、潮の満ち引きでぶつかったりして裂け目ができたり、盛り上がったりして、しょっちゅう動いているんですね。

そうすると一見平らに見えるんですが、罠がそこらじゅうにありまして、クレバス(氷河や雪渓の深い割れ目)が厚いところだと12メートルぐらいあるんですよ。

そういうのがいたるところにあるんで、ルートが限られるんですね。

だから最初の一羽がたどってうまくいけば、そこは安全なんです。

だから後の連中は危険を冒さず後をついてくるわけです。

 

 

ーいちばん先に立って歩くのはリーダーなんですか。

 

上田

昔はリーダーがいるという説もあったんですけど、ボスやリーダーはいません。

ただし、映画の中にもありましたが、年寄りの個体というのは、割と先頭に立つことが多いですね。

経験値を積んでいるので他の個体の影響を受けずに、自分の判断で行動が早いです。

だから若くて経験の浅いものはそれについていく。

ただし、なにかあったときにその年寄りのいうことを聞くというわけでもなくて、その年寄りのことを慕っているわけではない。

 

 

ー寒さをしのいでみんなで固まるじゃないですか。

何重にもなってますけど、当然ながら外側は寒いですよね。

あれはなにか仕組みがあるんですか。

 

上田

あれはハドリングといいまして、アメリカンフットボールのハドル、あれと同じ仕組みです。

あのハドリングのことを「おしくらまんじゅう」と表現してしまうんですけど、

単なるおしくらまんじゅうではないんですね。

 

あと、ヒナたちが寄り集まっているシーンがありますよね。

皇帝ペンギンの場合は親子にヒナが1羽なんです。

交互にヒナの面倒を見ますが、ある時期になるとヒナの食欲が増すんで、お父さんもお母さんも一緒に海に餌を取りにいって、ヒナだけ取り残されちゃうんですね。

そのヒナたちはみんなで寄り集まって保育園を作るんですけど、そこになぜか1羽、大人がまじってる。

あの大人は実はどのヒナの親でもないんです。

ヒナが死んでしまったりして、子育てに失敗した個体はそういう先生のような役割をするんですね。

 

 

ーそれは野生動物の中では珍しいんですか。

 

上田

珍しいですね。

特にペンギンの場合は、厳しい自然環境の中で集団繁殖しなければならないので、このような利他的行動が多く見られます。

そういう場面をなぜ監督が入れてくるかというと、皇帝ペンギンの珍しい生態を、映像でわかりやすく描いておきたいという気持ちがあるからだと思います。

前作は時系列にそってペンギンの子育てをやりましたけど、今回は時間軸が行ったり来たりする、少しややこしい進行の構成になっているので、そこをなんとか面白いシーンでつないでいこうという意図がわかります。

 

あと面白いのは、それまでは親のどちらかが残って小さなヒナの面倒を見ているわけです。

ヒナにとっては必ず後ろに親がいるので、寄っかかっているわけです。

ところが2羽とも餌を取りに行かなきゃいけないので、親が離れると、おっとっとっとって(後ろによろける)。

ああいうシーンを、監督もうまく撮ってますね。

あれはヒナの親離れの始まりのシーンなんですね。

 

 

ー皇帝ペンギンというのは他の野生動物と比べて、親離れは遅いほうなんですか?

 

上田

遅いほうですね。

かなり長い間餌を与えないといけない。

 

 

ーかなり大きくなるまで親と一緒にいますよね。

 

上田

ヒナの体重が親よりも重くなる時があるんです。運動しないですからね。

親はひたすらヒナに餌を与え続けて、ヒナはただあそこにいるだけです。

親はね、すごくマッチョなんですよ。

ところが昔、孵化してから3週間目ぐらいのヒナをCTをかけたことがあるんですけど、そしたら胴体の2/3ぐらいが胃袋でした。

だから体は小さくても、体重を測るとひなのほうが重いんです。

 

ペンギンにはまだわかってないことがたくさんありますね。

最大の理由として、ペンギンは7割方海で生活するんですね。

陸にいるのは繁殖と羽が生え変わるときだけ。あとは基本海です。

食べ物は陸では取らないので、海に行かざるをえないんですね。

海に行かれるとこちらはもう生態がわからない。

ようやく最近、技術が進歩していろんなことが少しずつわかってきました。

 

人類はまだ、チャレンジャー海淵の底を見てないんです。

海の一番深い底を見てない。

海も宇宙と同じくらいものすごく秘密がいっぱいあって、その秘密をこいつら(ペンギン)はいっぱい知っているわけです。

 

 

ー前作から12年経って今作を見て、新しい発見はありましたか。

 

上田

いくつかありますね。

まずはヒナの巣立ち(初めて海に入ること)の仕方ですね。

1列になってましたが、監督もこれを自慢したかったんでしょうね(笑)。

生き物や自然を撮っている人は、

「ほら、俺しか見たことないんだぞ、見たことないだろ?」

みたいなところは絶対にあると思います(笑)。

 

それから氷です。

雨が降ると氷が溶けて、丸くなったところがもう1度凍ってベネチアグラスみたいに滑らかに丸くなっている。

そこをペンギンが苦労して歩いているシーンがあります。

雨が降っているところは撮れなかったんだと思いますが、あの氷を撮っているということは、

「ほーら雨が降ってるんだよ」

という、南極圏に雨が降るという実証の最初の映像ですね。あれは僕もちょっとショックでしたね。

だからリュック・ジャッケ監督を含め、我々研究者が今後50年以内に皇帝ペンギンが絶滅する可能性があるというのはそこなんです。

ヒナの羽毛は保温性はあるんですが、防水性はないので濡れると体が冷えて死んでしまいます。

そうすると、今までは安全だったけど、これからこの子たちが成長していく巣立ち前の1番大事なときに雨に降られると、たくさん死んでしまうということなんですね。

 

3つ目は羽毛ですね。

今回は4K映像で、大人の羽毛のクローズアップ、ヒナの綿羽のクローズアップ、特に抜けていくシーンがありましたね。

あれは貴重な映像でした。

今まであんなにクリアに、ペンギンの羽毛が映し出されることはなかったと思います。

皇帝ペンギンには48種類の羽毛があるんですが、かなり詳しく羽毛の形状の違いなどがわかるようになってます。

あれ、羽毛がだめな人はだめでしょうね(笑)。

 

 

12年ぶりの新作ということで、新作に対する思い、前作との違いについて教えてください。

 

上田

12年間の中で監督自身も親になり、年齢を経て、いい意味で年を重ねていると思います。

一番大きいのは、なぜ今作は43歳の老人ペンギンが主人公なんだ、ということなんですね。

前作は、そういうことはまったく意識してなかったと思うんですよ。

今回は年寄り・ベテランの視点からこの生き物を見た新しい視点の置き方、プロットの立て方が、前作とは大きく変えてきてるなと感じました。

それは監督自身の12年という歳月を通して、もう1度皇帝ペンギンを老個体から見ると、この生き物というのはどう見えるのか、ということを新たに提示されたんじゃないかと。

単なるテクニックの発達を見せるだけじゃない、12年の歳月というのはそういう重みがあると思いますね。

 

 

 

誰も見たことがない南極とペンギンたちの姿を、最新の映像で送る驚きと感動の映像叙情詩。

京都では9月1日(土)より京都シネマにて公開。

 

 

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『皇帝ペンギン ただいま』

京都シネマで9月1日(土)より公開

監督:リュック・ジャッケ

http://penguin-tadaima.com

© BONNE PIOCHE CINEMA – PAPRIKA FILMS – 2016 – Photo : © Daisy Gilardini

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