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2017.12.5トピック

「だし」が形作る幸せな食卓。
津乃吉のこだわる食の豊かさ。

株式会社津乃吉 代表取締役社長の吉田大輔さんと、取材という形でお話をさせていただくのは2度目となる。

今年の7月、大阪で計画されていた「だし」についてのワークショップのコンセプトに惹かれ、企画者で講師の吉田さんに、そのイベントについて直接語っていただこうと取材をしたのが一度目。

そのときにお話をお聞きし、仕事場を見せていただいたときに率直に思ったこと・・・。

吉田さんのことは後で必ず取材し直して、もっとクラフトマンの本質を探る記事にしたい。

今回はその願いが叶っての訪問だ。

 

 

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津乃吉と吉田さんについて・・・

 

 

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ーー

前回の取材は実際に生産の現場を見せていただいて、撮影させていただいたりして大変興味深かったです。その節はありがとうございました。今回は私自身、満を持して、といった感じで、やっとクラフトをする「人」としての吉田さんの取材ができます。よろしくお願いします

 

吉田氏(以下敬称略)

よろしくお願いします。

 

ーー

まず今日のコンセプトなのですが、前回は津乃吉の商品やその製法から吉田さんの想いやお考えに迫ったのですが、今回はそこに吉田さんご本人のことやお考えになられていることをお聞きして、さらに深堀したいなと思っています。

まず、津乃吉さんとしてのご商売としてはいつごろからされているのでしょうか。

 

吉田

もともとは母方の家業のお米屋さんです。そこに私の父が入り、父がお米屋さんの先行き等々を考えて、佃煮などを作るお店にしました。最初に作ったは「山椒じゃこ」でしたね。

 

吉田さん自身は直接家業に入られずに一旦、会社員をされていましたよね。

 

吉田

(プロフィールを聞かれるたびに)繰り返し申し上げていることになるのですが、大学を卒業後に食品会社に勤めています。30歳までに(家業に入ることも含めて)自分の本当の進むところ、進みたい方向を決めたかったので、そのタイミングでいろいろと考えました。食品関係の会社で職人仕事とはほど遠い仕事をしていて、会社のオーダーに従って、いわば「こんなものを作って!あんなものを作って!」に応える仕事をしていました。管理職になって商品企画なども任せてもらえるようになって。実際にファミレスなどに置いてある商品などに私が作ったものがあったりするんですが、いろいろな人との関わりの中でモノを作るというのは、それはそれで充実はしていたのですが、一方で自分で「作ろう!」と強く想ったものでないので愛着は持てませんでしたね。それならば自分で作って自分で売ろうと、津乃吉としてモノ作りをしようと決心しました。津乃吉でモノを作るぶんには、例えばだししょうゆなら「津乃吉がやっているだししょうゆ」として、自分で語れますから。子供が産まれて、子供に自分のやっていることをしっかり説明できる仕事を選びました。

 

 

本当の「こだわり」とモノができるまで。

 

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ーー

私は、このクラフトマン・シリーズの記事では、単に「手作りということ」を推していることや、製法の独特さなどだけが全面に出ていることは取り上げないようにしているんです。手作りという行為や、手間暇、製法の独自性は「おいしいものを作る」「いいものを作る」という本質を追っていった先に「この作り方がベストです」ってなるものだと考えていますので。

 

吉田

よくありますね。手作りを謳うだけのものも。

そういった意味では、津乃吉の商品も「無添加」などど打ち出していますが、それは買っていただくときに、より解りやすく安心して買っていただけるので打ち出しているものです。

しっかり安心で美味しいものを作るとなるとうちでは添加物は使わないですから、あくまでも作りたいものがあってこその「無添加」なんですね。

 

ーー

最近、巷では多いですよね。特にここ京都でも言葉だけの「京風」とかはいくらでも言うだけ言えますから。そういうものが多いですから、メディアとして、しっかり伝えたいんです。

 

吉田

そこはしっかり、モノが出来る過程や工程をふまえての「こだわり」なのかどうかでしょうね。モノができあがる過程や工程を知らないと、ものの善し悪しもそうですが昨今言われているフードロスについての本当の理解も取り組みもできないと思います。過程・工程への理解があるから「もったいない」が感情として生まれると思っています。

 

 

食育、食文化の底上げとお出汁

 

 

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ーー

結構、若い人や子供たちにも食品のもとの姿形がわからない層が増えているというのはよく聞く話なのですが、その子供たちに向けてというと、吉田さんは食育というテーマに「だし」を使って講演やワークショップに取り組まれていますよね。

 

吉田

そうですね。子供たちに食について何か伝えるという部分ではだしというのが一番反応がいいんです。(イベント等で)一番だしなんかを出すと子供が喜んで何杯もおかわりをして飲む。そういう敏感な時期にしっかり食、味についての諸々を伝えるという目的があります。

それと日本の食生活の質の底上げです。時々おいしい、高級なものを食べるとかいう話では全体的な食文化、食生活の質の向上にはならないと考えていて、例えば毎日、家庭の台所でしっかりだしを摂って料理をして、それを日常の食事で毎日食べられるとか。そうすることが本当の意味での食生活の質の底上げなのではないかと思っているんです。

 

ーー

なるほど、おいしいものを利きわける味覚の豊かさではなく、食生活自体を豊かなものにするための取り組みなんですね。

 

吉田

でも、そのテーマでだしを持ち出すのは少し自分自身矛盾があるんですけれど。

家庭で丁寧にだしを摂って心を込めて料理して、家族全員でそれを食べるということを豊かさとして伝えていますけれど、津乃吉としては買ってすぐ使える「京だし」も商品として展開しているので(笑)。

ですので、有り難いことに講習やワークショップのお話を多々いただくんですが、毎回、そこの落としどころに困ります。

ただ一方で「京だし」は津乃吉の理念である「素材の使い切り」というテーマに沿って、ちりめん山椒を作る時にできる「じゃこだし」と津乃吉の財産「昆布だし」を使った別の意図と意義を持った商品なので、また違ったコンセプトで作っています。

 

 

素材を使い切る。もったいないの先へ。

 

 

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ーー

津乃吉さんの「素材を使い切る」という考えには非常に感銘を受けています。特に私は、前回の取材で製造の現場を見せていただいているので。

私は、別のプロジェクトで最近、食のリユースや循環型社会ということを考える機会があるのですが、その関連で知り合った方の中には、食の世界でのこういった考えが、もしかしたら少子化やその他もろもろの今の日本での社会生活で問題になっていることを解決できる足がかりになるんじゃないか、とおっしゃる方もいるくらいなんです。

 

吉田

あと食にとっては実際に味わう、体験するということが大切ですね。

12月3日(日)に大阪で、「千年の一滴 だし しょうゆ」という、非常にいいドキュメンタリー映画の上映会をやるのですが、そこでだしの利いたランチを予約制で振る舞います。

映像は視覚・聴覚に同時に訴える優れたメディアですが、やはり嗅覚と味覚は表現できないので、会場をだしの香りで満たそうと思ってます。そして映画を見ていただいて実際に食べていただきます。

 

ーー

すごく有意義な企画ですね。映画がテーマとするところが、より伝わって、見た人は絶対忘れない体験ですよね。

 

吉田

そういったこととか、昨今言われている食とファッションの融合とか、いろいろと考えていきたいことがたくさんあります。

その中で、今、取り組みはじめているのがさきほど話に出たフードロスへの取り組みです。

いろいろなアプローチがあると思いますが、このテーマについては継続できるものでなければ意味がないと思っています。

まずは「余った野菜」と「家庭の余り物」というテーマで動こうと思っています。どんな良い取り組みも個人としては負担が大きくて楽しくなければ続けて行けないし、企業さんを巻き込むにもメリットがなければお話に乗ってきていただけないし、取り組みを維持することは難しいですよね。

「余った野菜」と「家庭の余りもの」、まずはこの二つを美味しく、しかもさきほど話に出た食とファッションという観点からも、おしゃれに、見た目も奇麗に活かし切る。楽しくっておいしくって、お洒落で、メリットがあれば続いていきますから。

来年、2月もしくは3月にはイベントをしようかと計画中です。

 

ーー

それについてはメディアで発信するコンテンツを作っている立場からも伝えて、しっかり取り組む必要がありますね。何か一緒にさせていただければと思います。

 

今日は、前回の製法や製品に寄った話とはまた違った側面の貴重なお話をお伺いすることができました。

本日はお忙しい中、ありがとうございました。

 

 

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食育もフードロスも世間では降って湧いたかのような議論がされがちなテーマだが、津乃吉のモノづくりと吉田さんの想いの中には、いつの時も常に内包されている要素に他ならない。

真剣に考える必要のあることだからこそ、楽しく、スマートに、おしゃれに、たくさんの人を巻き込みやすく進めていくことが大切だと、つくづく思い知らされる取材だった。

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