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心華やぐ♪「いけばな」のある暮らし

 

 

「いけばな」と聞くと、「日本の伝統文化」「大和撫子の嗜み」「形式や作法に厳しい」など、なんとなく “高尚な感じ” がするから敬遠している人も多いかもしれませんが、それってすごーく勿体ない!!

 

なぜなら「いけばな」とは、「誰でも」「気軽に」楽しめるものだからです( • ̀ω•́ )b ✧

 

本記事で「いけばな」の基本知識(歴史、鑑賞方法)を紹介するので、読み終わった後は、ぜひ一度展覧会に足を運んでみたり、実際にいけばなを体験しにいってみてください♪

 

 

 

 

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《知っておきたい!》「いけばな」の歴史

 

発祥から現在にいたるまでの「いけなば」の歴史をご紹介。「そもそもいけばなって何?」という人、必見です♪

 

1.神様・仏様に対して花を捧げたことが “花をいける” 行為の始まり

 

「いけばな」の起源は諸説ありますが、一般には飛鳥時代(西暦592年~710年)に仏教が伝来して発生した、仏様に花を捧げる行為=「供花(くげ)」が “花をいける行為” の始まりと言われています。仏様への捧げものに選ぶほど、当時から花は人にとって特別な存在だったようです。

 

ちなみに、人が花(植物)を特別なものと考えるようになったのは、常緑樹(じょうりょくじゅ)信仰など、古代の自然崇拝にまでさかのぼります。

 

常緑樹とは一年中葉っぱが緑色の木(松や杉)のことで、昔の人は「冬になっても葉が枯れないのは(その木に)神様が宿っているから」と信じ、そこから常緑樹を神様の依り代と考え、花を飾り付けたりする習慣が生まれました。お正月の門松は、そうした常緑樹信仰の名残のひとつです。

 

 

☆お花のマメ知識☆

お花見も神様に降りてきてもらうための行事だった!?

 

春の風物詩であるお花見も、実は神様への信仰に由来する行事です。桜は古来より穀物の神様の依り代と考えられており、昔の人々は春先に植えた作物の豊作祈願のために桜の木の前でどんちゃん騒ぎをして、穀物の神様に降りてきてもらおうとしました。

 

どんちゃん騒ぎをするのは神様に気づいてもらうためだったようで、ノリとしては「うぇ~い! 神様~、ここですよ~!!」という感じだったのかもしれません(笑)。ちなみに桜の「サ」は田の神を指し、「クラ」は神の座を意味しています。

 

 

2.室町時代、京都で生活文化としての「いけばな」が成立

 

神様・仏様への捧げものから始まった“花をいける”という行為は、やがて人を楽しませるためにも行われるようになり、室町時代には都である京都で、屋敷の床の間などに花瓶を飾る「座敷飾り」が大流行しました。そして「池坊専慶*」など、花いけの名手たちが現われ始めたことで、生活文化としての「いけばな」が成立したと言われています。

 

*京都にあるお寺・六角堂の僧侶。現在も続いている「いけばな」の流派「池坊」のご先祖様。

 

☆お花のマメ知識☆

思わず人に話したくなる、花の名前のハナシ

 

花の名前の由来は実に多彩で、見たまんまのものや、花の持つ性質を表したもの、面白いエピソードに由来するものまでさまざま。いくつか例を紹介するので、興味を持った人はぜひ色々調べてみてください。飲み会やデートで披露するネタとして重宝しますよ♪

 

チューリップ:名前の由来は中東の民族衣装「ターバン」。見た目や花の咲き方がターバンに似ていることから、ターバンのラテン語「チューリバン」が変化してチューリップと呼ばれるようになった(諸説あり)。

 

ジャスミン:語源はペルシャ語の「ヤースミーン」で、意味は「神からの贈り物」。花の美しさと香りの良さからそう呼ばれるようになったと言われている。

 

スイセン:中国の古典「仙人は、天にあるを天仙、地にあるを地仙、水にあるを水仙」に由来。水辺に咲く美しい姿から仙人に例えられた。英名の「ナルシサス」は、ナルシストの語源であるギリシャ神話の美少年・ナルキッソスに由来する。

 

 

3.時代とともに流派・形式が多様化し、現在に至る

 

室町時代に生活文化として成立した「いけばな」は、その後時代がくだるとともに理論化が進み、江戸時代には多くの流派が誕生しました。それに伴い、いけ方も多様化していき、家元制度のもと、各流派が独自の理論・形式で「いけばな」を発展させていき、今に至ります。

 

 

☆お花のマメ知識☆

切り花を長持ちさせるテクニック「水切り」

 

お祝いでもらった花束をお家で花瓶に移し替えたのに、あっという間に枯れてしまった…。なんて経験はありませんか? これは茎の断面から入った空気が邪魔で花が上手く水を吸い上げられないことが原因の場合が多く、「水切り」というテクニックを駆使すれば簡単に回避できます。

 

やり方はすごく簡単で「茎の根本部分を水に浸し、先端から2~3cmの部分を水中で斜めにカットする」だけ。水中でカットするのは、茎の中に再び空気が入ることを防ぐためで、斜めにカットするのはその方が断面が広くなり水をたくさん吸えるからです。

 

花にも命があるので、花瓶に移す前にしっかり「水切り」して、できるだけ長くきれいに咲いていられるようにしてあげましょう♪

 

 

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《楽しみ方をレクチャー♪》いけばな鑑賞のすゝめ

 

『いけばな』に興味を持ち「展覧会に行こう」と思い立った時に役立つ、展覧会の楽しみ方や鑑賞のポイントを心華やぐいけばな作品の写真とともにレクチャー♪

 

その1. 難しいマナーやドレスコードは一切なし!

『ジャパンスピリッツ in 京都』特別展 ~ハナノチカラ~(2020.12-2021-01)|作 杉崎翠山(喜堂未生流)

 

“いけばな鑑賞” と聞くと、和服を着こなす上品な身なりの方々が静かに作品と向き合いながら、時折「ほう、この花の反り具合は素晴らしい…」などとつぶやく、ハイソサエティな空間が広がっていると思っていませんか?? それは大きな誤解です。

 

格式ある展覧会などはその限りではありませんが、多くの場合、カジュアルな服装で来られる方がほとんどです。なので、フラッと足を運んでみてもまったく問題なし! 鑑賞時の特別なマナーやルールもないので、変にかしこまる必要もありません。

 

 

その2. 気軽に、楽しく、自由に鑑賞するのが一番!!

京都新世代いけばな展 2016 ~花×彩×葉~(2016.11)|作 大津智永(都未生流)

 

次に鑑賞の仕方ですが、自由に、自分が見たいように見て楽しめばそれでOK!* 華道家さんの多くは、(見る人に)先入観を持たず、自由に作品を楽しんで欲しいと思っています。そのため作品にキャプション(解説)が付いていないことも多いです。

 

*“自由に” といっても、作品に触れる、会場内を走り回るなどの行為は当然NGなので、絶対にしないように!

 

作品の “正しい” 鑑賞方法もありません。作品を全体像で捉えて楽しんでも良いし、部分的(花の一部)に注目して見るのもありです♪

 

技術的な部分や、各流派の特徴など、理解していると鑑賞が一層楽しくなる見どころもありますが、それは追々わかるようになるので、まずは思い思いに楽しみましょう。それが一番の鑑賞方法です。

 

 

その3. 作品が “時間” とともに変化することも醍醐味のひとつ♪

京都新世代いけばな展 2015 〜 日本美 〜(2015.02)|会場風景

 

「いけばな」は絵画や彫刻と違い、植物=生きものを用いて創る芸術のため、 “時間” とともに作品が変化していきます。花の表情は刻々と変化していくので、朝に見た作品を夕方にもう一度見ると、作品の印象がガラリと変わることも珍しくありません。

 

また、いけばな作品は会期中に花のいけ替えが行われますが、同じ花でも一輪一輪表情が異なるため、いけ替えの前後でも作品の雰囲気は変化します。

 

そうした “変化” を楽しむのもいけばな鑑賞の醍醐味のひとつなので、面白い展覧会に出会えた時は、日にちや時間を変えて何度も足を運んでみてはいかがでしょうか。

 


この記事を書いているゴ・バーン編集Aも、先日初めて「いけばな」を体験しましたが、花の向きや長さ、バランスを考えながら一本一本いけていくうちにどんどん熱中していきました。何かに没頭するなんて久々で、すごく楽しかったです(^-^)

 

ゴ・バーン編集Aによる初いけばな。先生の丁寧な指導のおかげでこんなにきれいにできました!

 

皆さんもこれを機に、ぜひ心華やぐ「いけばな」のある暮らしを楽しんでみてください♪

 

 

 

本特集記事を作成するにあたり、華道家の大津智永先生(都未生流・写真右)、杉崎翠山先生(喜堂未生流・写真左)にご協力いただきました。大津先生、杉崎先生、ありがとうございました!!

 

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