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【京焼・清水焼】知ってる? 京都府立陶工高等技術専門校〈ものづくりを仕事に!!〉

京都の伝統工芸「京焼・清水焼」の後継者を育成している『京都府立陶工高等技術専門校』をご存知ですか? 1年~2年の訓練期間で職人として必要な技術の基礎が身に付き、研修旅行やものづくりフェアなどの楽しい学校行事も充実した、ものづくりを仕事にしたい人にピッタリの学校です。
今回はそんな『京都府立陶工高等技術専門校』の魅力をご紹介♪
INDEX
創立75年の歴史を誇る、日本に2つしかない陶工職人の育成校
校内_エントランス
校の理念は「京都のものづくり文化を継承・発展させる人材」の育成
『京都府立陶工高等技術専門校』は、京都の伝統産業の一つである「京焼・清水焼」の後継者となる人材の養成施設として京都府が設置した職業能力開発校(技能習得施設)です。(令和2年(2020)から “ 京都陶芸大学校 ”という愛称が付きました!)
その歴史は昭和21年(1946年)に設立された「京都府立陶工職業補導所」までさかのぼり、令和3年(2021)で創立から75周年を迎えます(*^^*)
校内_中庭
ちなみに、陶芸を学ぶことのできる職業能力開発校は全国でもここ『京都府立陶工高等技術専門校』(以後、京都陶芸大学校)と『名古屋高等技術専門校窯業校』の2校だけ! そのため、京都だけでなく全国各地から訓練生が集まっているそうです。
☆column☆
「京焼・清水焼」ってどんな焼物?
photoAC_撮影/まめたんモフモフ
「京焼」は、もともと江戸時代に京都で作られていた粟田口焼、八坂焼、音羽焼、御室焼、御菩薩池焼、修学院焼などの焼物の総称で、清水寺の参道・五条坂で作られていた「清水焼」もその一種です(東山の山麓地域で作られたものを「京焼」とし、「清水焼」と区別する場合もある)。現在は京都で作られた手造り・手描きの焼物全般のことを「京焼・清水焼」と呼びます。
「京焼・清水焼」には決まった原料や様式、技法がありません。それはかつて都だった頃、京都には全国からさまざまな原料や職人が集まり、作家や窯元ごとに個性の異なる焼物が数多く作られたからで、そうした多様性が京焼・清水焼最大の特徴です♪
★京焼・清水焼の詳しい製造工程が知りたい人はコチラの動画をチェック!
訓練課程はやきもの成形科(基礎コース・応用コース)と絵付デザイン科の3コース!
訓練科は、ろくろや石膏型を使った焼物づくりを学ぶ「やきもの成形科」と、手描きによる絵付を学ぶ「絵付デザイン科*¹」に大別され、やきもの成形科はさらに「基礎コース*²」と2「応用コース*³」の2コースに分かれます。応用コースは訓練期間が基礎コースより1年長く、陶器(土もの)に加え、磁器(石もの)の作り方まで学べます。※各訓練科の訓練内容は後述。
*1 令和2年度(2020)までの名称は「やきもの図案科」*2 令和2年度(2020)までの名称は「成形コース」*3 令和2年度(2020)までの名称は「総合コース」
最大の特徴は“製品”としての陶磁器を作るための技術・技能の習得を目的としていること。美術系大学のように自分の「作品」づくりを目指すのではなく、職人として「同じものを、速く、正確に」作れることに重きが置かれています(。-`ω-)
“技術の習得”に特化したカリキュラムで「モノづくり」の力がしっかり身に付く!
訓練では同じものを速く、正確に作れるようになるための反復練習を重視!
訓練は基本→応用と段階を踏んで技術を向上させていくようにカリキュラムが組まれています。訓練の内容は速さと正確さを高めるための反復練習を重視しており、たとえば成形科では「同じ小煎茶碗を80個製造」といった課題に取り組むそうです!
少人数制・一人ひとりの進度に合わせた個別指導が基本
各科定員が10~20人の少人数制で、指導員による個別指導が基本のため、一人ひとりの進度に合わせた訓練を受けることができるのも魅力の一つ♪
さらに年間の訓練時間1400時間のうち8割以上が実習と、質・量ともに濃密な訓練を受けることができるので、まったくの初心者でも確実に技術を身に付けることができます。
★各科目のカリキュラム*(在校生コメント付き)*令和3年度(2021)以降のカリキュラム
①やきもの成形科 基礎コース
概要 | 陶器の基本技術が身につき、即戦力となる人材の育成を目指す1年制のコース。日々の訓練指導を通して、陶磁器製造の基礎知識と高いろくろ成形の能力を習得する。 |
訓練期間 | 1年間 |
定員 | 20人 |
訓練内容 | 【基本課題】土もみ、土どり、小煎茶碗、丸底湯呑、角底湯呑、額皿、一輪生、筒花生
【応用課題】花器・細花生、鉢・皿、煎茶器・番茶器、コーヒー碗・紅茶碗、茶道具、香炉など |
在校生から一言
「技術や知識を基礎からしっかり指導してくださるので、初心者の私でも安心して取り組んでいます。ろくろの反復練習は課題に工程があり、レベルアップしていくのが楽しいです。夢中になって土と奮闘する日々はとても充実しています」(やきもの成形科1年/20代/女性)
②やきもの成形科 応用コース
概要 | 陶器と磁器の両方の製造技術を身につける2年制のコース。日々の訓練指導を通して、陶磁器に関する幅広い知識と多種多様な成形技能を習得する。 |
訓練期間 | 2年間 |
定員 | 10人 |
訓練内容 |
●1年次(陶土による成形)【基本課題】土もみ、土どり、小煎茶碗、丸底湯呑、角底湯呑、額皿、一輪生、筒花生 【必修課題】花器、抹茶碗、煎茶器・番茶器、茶道具、香炉、石膏型、タタラ成形(石膏型を用いた変形皿作り) ●2年次(磁器土による成形)【基本課題】ローラーマシンの製品削り、汲み出し碗、フリーカップ 【必修課題】鋳込み成形、打ち込み型成形 【応用課題】煎茶器・番茶器、花器・細花生、大鉢・大皿 |
在校生から一言
「十人十色の仲間と和気あいあいと、また切磋琢磨しながら日々ろくろに向かい訓練に励んでいます。未経験の身でしたが、作れるものが増えていく過程が毎日とても楽しいです。来年は磁器分野の履修があり、更に充実した学びになると感じ、ワクワクしています」(やきもの成形科1年/20代/女性)
③絵付デザイン科
概要 | 毛筆の使い方、線の描き方、絵具の使い方など絵付の基本技能を習得する。令和3年度から2年制となり、テーマやニーズなどに応じたデザインを考える商品開発力に重点を置いた訓練も実施予定。 |
訓練期間 | 2年間 |
定員 | 10人 |
訓練内容 (1年次) |
【基礎実技】紙上訓練(小紋/山水/松竹梅/唐草)、下絵付基本課題(市松/小紋/丸紋山水/松竹梅/復習)、上絵付基本課題(市松/小紋/松竹梅/抹茶盌)
【応用実技】下絵付応用課題(小物デザイン~大物デザイン) 【必修課題】祥瑞デザイン、花のデザイン、コンセプトデザイン(下絵付)、タタラ皿デザイン、豆皿作成、箸置作成 |
在校生から一言
「流れるような手つきで美しい紋様を器に描く。そんな職人を目指して日々の訓練に取り組んでいます。自分でデザインした器の絵付けは、特に力が入ります。完成した器がうまくできていた時の喜びはとても大きいです」(やきもの図案科1年/20代/女性)
実習のほか、「製陶法」「図案法」「美術工芸史」「マーケティング」など、座学の授業もあります。
★歴代修了生の作品
1~2年間訓練を積んだ修了生の作品がこちら! ここまでのクオリティのものが作れるだけの技術が身に付きます。
京焼・清水焼の茶碗(作:京都府立陶工高等技術専門校 訓練生)
☆column☆
修了後の進路は・・・
ものづくりを仕事にしたくて入校を考える人が一番気になることといえば、やはり修了後の進路だと思います。学校に伺ったところ、OB・OGの進路として最も多いのは「製陶事業所や窯元での陶磁器製造業務」でした。身に付けた技術を振るってものづくりの現場で活躍できるのは嬉しいですね(*^^)v ほかにも陶芸教室のインストラクターになったり、自分で工房を立ち上げたりする人や、営業、企画という形でものづくりに携わっている人もいるそうです。
★OB・OGには陶磁器の世界を代表する著名人も!
進路の話でいうと、京都陶芸大学校は清水保孝氏や深見陶治氏など、日本の陶磁界を代表する陶芸家や職人さんを数多く輩出しています。文化功労章受賞、京都府無形文化財保持者など、そうそうたる経歴の持ち主もいます。
校生活を盛り上げる豊富な行事 & 充実の校内設備も魅力的♪
校舎_外観
地上3階・地下1階建ての立派な校舎で、施設も設備も超充実!
敷地面積約5000m²を誇る校舎があるのは、東山区東大路馬町を東に700メートルほど進んだ、阿弥陀ヶ峰のふもと(京都女子大学の近く)。古清水(清閑寺焼・音羽焼)発祥の由緒ある地でもあります。
地上3階・地下1階からなる本館には各科の実習室、釉薬調整室、工作室などの訓練施設のほか、ギャラリーや体育室、図書室などの施設も完備。別棟で焼成室(窯場)もあります。
校内_陶工ギャラリー
★主な校内施設
①実習室
写真は「やきもの成形科 基礎コース」の実習室
各科に一室設けられており、人数に対してかなり広め。一人ひとりの訓練スペース(作業場)が十分に確保されているので、訓練にしっかり集中できそうです(^O^) 設備も充実しており、成形科の場合、大物も製造できる高性能のろくろが1人1台割り当てられます!
②焼成室
成形した器を焼くための電気窯8基とガス窯2基を完備。大きい方のガス窯(1m³)は抹茶椀であれば一度に400~500個程度焼成できるとか! こうした立派な設備の存在が、日々のモチベーションにつながっていそうです(`・ω・´)b
ガス窯の内部(1m³)
③工作室
実習に使用する道具を制作するための施設。仕事道具も手づくりすると聞いてびっくりしましたが、それも含めて伝統技術の継承なのだと思うと納得です。道具を大切にする心も養われそう(*^^)v
そのほかの施設 |
施釉室、講義室・視聴覚室、講堂・体育室 |
訓練生同士の絆が深まる学校行事も盛りだくさん!
京都陶芸大学校では、校内訓練だけでなく研修旅行・登り窯見学などのフィールドワークや、京都ものづくりフェアなどの展示・即売イベントといった学校らしい行事も実施されます。こうした行事を通して、同じ夢を持つ同級生や先輩たちとの絆が深められるのも嬉しいですね!
★主な年間行事(在校生コメント付き)
①研修旅行
「研修旅行では、他産地の事業所の成形法から施釉・上絵など、様々な工程を間近で見学することができて、とても勉強になりました。今後、自分自身がどのように働いていくかのイメージがグッと広がりました」(やきもの成形科2年/30代/女性)
②ものづくりフェア(作品即売会)
「ものづくりフェアでは、器の販売を体験しました。お客様の生の声を聞き、自分たちが作った器を購入し、使っていただくうれしさを実感しました。お客様を意識することで、陶工校の実習への意欲が上がる、実りのある体験でした」(やきもの成形科2年/20代/女性)
③体育訓練(ソフトボール大会)
「体育訓練(ソフトボール大会)は、科の違う先輩や同級生と交流でき、グッと距離が縮まったイベントでした。先生方も勝ち気な姿勢で、訓練とは違う雰囲気で新鮮。悔しい結果となりましたが、気分転換になり、次の訓練からまた気合いが入りました」(やきもの成形科OB/30代/男性)
そのほかの行事 |
野外訓練(登り窯見学)、事業所見学、オープンキャンパス、OB・外部講師による講話、修了展・即売会 |
受験~入校までの流れ(必要な費用も解説!)
訓練生の募集は年に2回!
京都陶芸大学校の訓練生募集は、毎年一次募集と二次募集の計2回行われます。一次募集は秋(10月)、二次募集は冬(1月)に実施されます。注意点としては、二次募集の定員は一次募集の合格者数によって変わる場合があるので、できるだけ一次募集の時に受験した方がいいかもしれません(=゚ω゚)ノ!
※二次募集後、定員を満たさなかった場合は、追加募集を行うこともあるようです。
応募資格は「高等学校卒業者と同等以上の技術習得能力を有すると認められる入校時に満18歳以上の者(高卒程度)」。
試験は学科・実技(デッサン)・面接の3科目
気になる入校試験の内容ですが、各科共通で「学科試験」「実技試験」「面接試験」の3科目です。詳しい内容は下の表の通り。
なお、受験には入校選考料が2,200円かかります。
合格後、入校~修了までにかかる費用は20万円~30万円程度
お次に、こちらも気になる費用の話ですが、入校後、修了するまでに必要な経費は「入校料」「授業料(年間)」「実費負担金(教科書・工具等経費)」の3つ。
科によって異なりますが、総額でだいたい20万円~30万円くらいです(詳しくは下の表をチェック)。また、人によっては減免措置が受けられます。
★令和3年度(2021)の募集案内を確認したい人は下のQRコードから専用ページに移動してください!
コチラからも移動できます。
https://www.pref.kyoto.jp/tokgs/qa.html
★2021年1月に「入校説明会」&「即売会・体験教室」が開催されます!
新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止になった「オープンキャンパス(毎年7月開催)」に代わり、2021年1月に「入校説明会」を開催することが決定! 各科の訓練概要や試験の説明のほか、実習室等の見学が予定されています。
日時 | 2021年1月7日(木)10:00~ |
場所 |
京都府立陶工高等技術専門校京都府京都市東山区今熊野阿弥陀ヶ峰町17-2 |
また、入校説明会とは別に、訓練生が作った製品の即売会や、ろくろ・絵付の体験教室(各5名×4回程度)も開催予定!(新型コロナウイルスの感染拡大状況によって、開催を見合わせる場合があります)